妊娠中のお母さんがよりよいお産をするためにぜひ気をつけてほしいことがあります。つまり、分娩には3つの要素があり、そのバランスがうまくとれている時、お産は楽に進みます。この3つは、お母さん方の注意で、ある程度コントロールすることができます。
それは、具体的に説明しますと、@赤ちゃんがあまり大きくなりすぎないこと、それぞれの母体に与えられた骨盤に合った適当な大きさであること。A産道には生来決まった大きさがあるので、それには余分なものを排除する必要があり、つまり太り過ぎないことで、またそれがBよい陣痛を促してよいお産に結びつきます。
妊娠して出産するまでのおよそ280日間を「いかにじょうずに楽しく過ごす」かは、生活面から見てゆきましても、まず、ご主人あるいはお姑さんとの関係に、ストレスを溜めないように工夫することも必要でしょう。お母さん自身もゆったりとした気持ちで、なるべくいやなことは気にせず、情緒をバランスよく保つように心がけましょう。
まず、心身ともに不安定な妊娠初期は、家庭ではよい音楽を聞くのもいいでしょうし、よい環境を整えるために部屋の見直しやインテリアの工夫、飾りつけなども気分転換になります。アメリカでは、運動は「ダイビング、飛び込み、乗馬」以外はOKだそうですが、個人差もありますし、過激な運動はなるべく避けましょう。つわりは、一時的なもので必ず終わりがありますから、気を楽にもちましょう。タバコはやめることです。
妊娠5か月ぐらいの中期からは、食事のバランスに気をつけて、なるべく運動するように心がけましょう。お勤めをしている人は、日常的に適度に身体を動かしていますから、あまり心配はないのですが、専業主婦の人は、時間に余裕があり、テレビを見たり、つい食べ物に手が行き食べ過ぎになりがちです。とにかく、太り過ぎに注意して、出産までの体重増も10L増ぐらいまでに抑えましよう。
また、母親教室にも積極的に参加して、これらのことが自然に身につくように努めましょう。栄養のバランスのこと、乳房のこと、お産の時の呼吸法のことなど妊娠中に学べることをなるべく学んで、お母さんになるためのせっかくの準備期間ですから、妊娠している間にいろいろなことを勉強してください。女性としても、きっと一歩前進すると思います。
また、マタニティエアロビクスとヨーガのレッスンもありますが、どちらも参加すると身体を思いきり動かすので、後で気分が良いと評判です。
母親教室やレッスンにしてもいろいろな人と知り合って、友達になり、仲間ができてと、お母さん同士の輪が広がることはとてもよいことです。おたがいいろいろなことを同じ立場で話し合って交流が深まりますし、現代は核家族のご家庭も多いですから、産後もよい相談相手になってスムーズに育児がすすみます。
理想はかかげてみても、人間社会・現実にはいろいろありますから、精神的なケアも不可欠です。その点をフォローするために、当院では妊娠5か月ぐらいからのお母さんを対象に、必要があれば心理カウンセラーによる個人的な相談もあります。
また、ただ何人かの人には、胎児の発育が遅れたり、異常分娩が起こることもあります。その時は医師およびスタッフと一緒に、現実に負けない強い心を持って赤ちゃんのために頑張ってください。担当医師とスタッフは、いつでもお母さんたちの「満足のいくよいお産」を願っています。