妊娠健診の際よく行われる検査の一つに、風疹抗体価があります。以前風疹に感染していて、すでに免疫を持っているかどうかを調べる検査です。
風疹抗体が陰性の人、すなわちまだ風疹にかかったことのない人が、妊娠初期に初めて風疹ウィルスの感染を受けると、そのウィルスが胎児にもうつって胎児の発育を障害し、いろいろな形の先天異常を引き起こすことがわかっています。そのような異常を持って生まれた子どもを、先天性風疹症候群と言っています。
妊娠8週まで(2か月)の感染では、心室中隔欠損などの心臓の奇形が、妊娠8〜11週(3か月)の感染では白内障などの目の異常が、妊娠12〜15週(4か月)の感染では聴力障害などの耳の異常が起こります。その時期にこれらの器官が発育するため、感染の時期に応じて障害の現れ方が違います。
妊娠の早い時期に感染するほど、先天性風疹症候群の発生する割合は高く、また障害の程度も高度になるばかりでなく、発生する異常の種類も多くなります。したがって風疹抗体を持たない妊婦さんは、妊娠初期には風疹に感染しないように注意する必要があります。
風疹に初めて感染すると、抗体価は非常に高くなります。子どものときに感染したように、感染後何年もたっている場合は、抗体価は比較的低い価となっています。したがって風疹抗体価を調べると、感染の有無や、感染の時期を推定することができます。
すでに風疹の免疫を持っている人が、風疹の患者に接すると、抗体価が高くなることがありますが、風疹ウィルスは抗体によってすぐ殺されてしまうため、妊婦の場合でも心配はありません。
妊婦健診で初めて風疹抗体を調べて、その価が高かった場合、妊娠後に感染したかどうかの疑いが持たれます。それをはっきりさせるためには、風疹抗体についての精密検査を行わねばなりません。そのような検査を繰り返しているうちに、胎児はどんどん大きくなっていきます。妊婦は不安な毎日を過ごすことになります。
そのような理由から、妊娠する前に風疹抗体の検査をぜひ受けておくことをおすすめします。母親に小さいときにかかったことがあると言われていても、検査は必要です。麻疹(はしか)や突発性発疹のように、症状のよく似た病気はいろいろあるため、母親の記憶は必ずしもあてにならないからです。
最近女子は十五歳のとき、風疹ワクチンの予防接種を受けることになっています。これを受けてもうまく免疫ができないことがあるので、やはり妊娠前に抗体価を調べておくのはよいことです。
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