この五月の「東京母性衛生学会」での発表によると、最近、女子高生を対象に調査したところ、「赤ちゃんは欲しいけど、お産はとてもこわい」と答えた人が多かったということです。私も、近頃、出産をこわがる患者さんが増えているように思います。
そこで、私は、母親教室の講師に立つ時などに、不安をとくように、3つのことをお話しています。
1つには、お産は生理的なことで、病的なものではないということ。けれど正常と異常裏腹で、順調に経過していても、突然、異常事態が起きる場合もあるということ。
2つには、母子両方の問題であること。
3つには、妊娠には個人差があるということ。高血圧だとか、糖尿病だとか、貧血症であるとか、自分の状態をよく把握しておくこと、と。
詳しく話しますと、1つめの異常事態は、たいてい「おりもの」の状態で予測できるとお教えしています。
妊娠中のおりものは、色のない、しろっぽいものが正常です。ピンクがかったり褐色になったりしたら、それは出血しているということで要注意。流産、早産、前置胎盤など、異常の赤信号だと覚えておいてください。自覚症状がなくてもあなどってはいけません。「次の定期検診で言う」とか、「近所の人が『たまにそんなこともあるわよ』といったから」などと言わず、すぐ病院に行ってください。そこで対処すれば、たいていの場合、防げます。
もうひとつ、3つめに言った「貧血」についてですが、これは、ほとんどの妊婦さんに当てはまります。妊婦さんは、「出産って、すごく痛いらしい」とか「妊娠中毒症になったら大変」とかそんなことばかりこわがって、貧血は、案外無頓着です。が、私はこれこそをこわがってほしいと思っています。
いまの女性は、よくダイエットしているでしょう。だから、妊娠前からして貧血の人が多いんです。妊娠したら、母体の血液中の鉄分がどんどん胎盤を通し、赤ちゃんに吸収されますから、ますますひどくなります。血液によって運ばれる酸素は、胎児の各機能を形成していく時に多大な力を発揮するものです。十分、酸素がいかないために流産、早産することもあります。
出産しても低体重児だったということも多いですね。低体重というのは、からだの各機能は正常でも、おかあさんの体格からして本来なら3000gあってもいい赤ちゃんが25〜600gだったりすることです。これは、やはり後々の発育に響くこともあるようですよ。
貧血はもちろん、母体にもいいことはありません。微弱陣痛、陣痛が長引く、出産時の出血がひどくなる、産後の子宮の収縮が悪くなる・・・という状態を招きがちです。「母子両方の問題」とは、こういうことなんですね。
でも、まあ、 ・・・赤ちゃんを生むって、夢があるでしょう。その気持ちのまま、妊娠期間を過ごし、分娩に臨んでください。こわがらずに、夢をみながら。
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