富山県では現在、産婦人科医会と県の厚生部が一生懸命取り組んでいる問題があります。そのことを妊婦さんにも是非知っていただければと思います。ご存知のように現在日本では、出生率が年々減っています。その中で富山県は全国的に見ても44〜45位と低く、年間の出生数も1万人を切るという事態になっています。これは高齢化社会を意味するとともに、そのお年寄りを支える若い世代が数的に育たない、どんどん減るというわけですから、将来的にも危機感があるわけです。そのためにもっと赤ちゃんを産んでもらおうと、ここ4〜5年必死になっています。
幸い平成6年には全国的に出生数が増え、富山県でも増えました。しかし、これは第二次ベビーブームのお子さんたちが出産の時期に来ているためで、ここ数年はこの傾向が続くと思われます。
とにかく子どもを産んでもらおうと。その反面、富山県では新生児の死亡率データが悪く平成2年が全国ワースト2、3年がワースト7位、4年がまたワースト1。これは非常に悩ましいことです。出生数が少ないところにこういう新生児死亡が多いと、すぐにデータに現れてしまうわけです。
そうしますと母子保健の後進県といいましょうか、何とか是正、新生児死亡を減らしたい。それには分母が小さいから分子を小さくすることで順位は良くなる(例、平成2年が38名死亡全国46位、3年21名死亡41位)だろうと、何とか新生児死亡を減らそうと努力をしているのが現状なんです。
こうしたことから、昨年、実際に(平成2、3、4年に)亡くなられた赤ちゃんのお母さん全員に訪問調査、原因をお聞きしたところ、そのまとまったデータからは低出生体重児、特に1500g以下の極小未熟児で生まれる赤ちゃんの死亡率が高く、早産をされると死亡率が高くなるということがわかりました。つまりは、在体週数37週未満の早産の場合に死亡率が高くなるということになります。
また、過去の妊娠分娩に異常(切迫流産、切迫早産、死産)があった人の場合やはり死亡率は高く、現在の妊娠中に異常(妊娠中毒症が一番の問題)があった場合にも死亡率が高くなるということもわかりました。
そこで次に切迫早産、早産徴候が出た人を入院治療した場合と、入院治療しなかった場合とを比べたところ、入院治療した場合は赤ちゃんもお腹にいる在体期間が延長され、出生時の赤ちゃんの体重は大きくなり、(当然生まれた赤ちゃんの新生児集中管理システム=NICUへの収容率は低くなり)入院治療したケースからは新生児死亡は見られませんでした。
その結果から、新生児死亡を減少させるためには適切な治療を行うことで早産を予防し、極小未熟児の出生を減らすことが効果的だとわかりました。
これらのことから富山県では、「少しでも早産傾向があった場合は入院して、なるべくお腹の中で赤ちゃんを大きくし、産んでもらうための治療をやろうじゃないか」と決定、そのために県では切迫早産の妊婦さんについては、自己負担分の入院外来費用を昨年10月から公費で負担しています。
これはおそらく全国で初めてで、妊婦さんにとっては大変入院しやすくなりました。もちろんその間家族や職場の人にとっての理解や協力も必要ですから、その理解も進んできていますし、保育サービスの提供、労働環境の整備も同時にすすめられています。
こうして、元気で健康な赤ちゃんを産み、育てていただくための努力がされてきているのです。