昔は、お嫁に行く時
「二度と実家の敷居をまたがないように」と、両親の心痛の思いを込めて聞かされたといいます。もちろん、早く嫁ぎ先に馴染みなさいという諭の言葉ではあります。
が、今では何かといっては実家に帰ってるように見受けられますし、分娩の場面では、それが通例になっているような感じもします。
良いか悪いかの論議はありますが、それは別として、確かに、核家族化された現在では、分娩の場合には致し方ないと考えられる一面もあります。
一般的に、都会では近所付き合いも少ない上に、子どもを持つ人も少なくなっていますから、妊婦さん同志の交流もままならないでしょう。ご主人がお勤めに出てしまえば、ただ一人で家を守らなければならないし、勤務の都合などで、住み慣れた土地を離れ、遠隔の初めての土地に住む方などは、相談相手も無く不安この上なしの状態でしょうから、里帰り分娩も一概に批判はできません。
といいましても、医学的にみれば、里帰り分娩は決してよいことではなく、妊娠初期から引き続いて分娩までを、主治医の管理の元で行うのが理想的です。
多くの病・医院では、妊娠初期に種々の検査をして、特異な疾患がないか、継続して観察する必要があるか無いかをチェックします。
また、妊娠の各時期では、必要な超音波診断をして、胎児の発育が順調かどうか、妊娠中毒症はどうだろう、その他の妊娠合併症が無いだろうかなどを、主治医がいちいち克明に調べてくれているのです。
それが、急に里帰りになると、せっかくの管理が中断されることになってしまいます。
また、飛び込まれた側の病・医院では責任のある対応が取れない場合も出てきます。
そこで、どうしても里帰り分娩をしなければならない事情があるならば、遅くとも妊娠35〜36週には郷里に帰って、出産をする病・医院で受診、管理を受けるようにしてください。
その際、今までみてくれた先生に事情を話して、検査成績(データ)と一緒に先方の病・医院への紹介状をいただいて、ぜひ持参するといいでしょう。
できれば、妊娠前にでも帰郷した際に、出産する病・医院を決めておき、妊娠中にもあらかじめ1〜2回の受診をすることをおすすめします。
というのは、分娩は、主治医と妊婦さんの信頼関係が重要なポイントだからなのです。 そして、いってみれば、愛の結晶である赤ちゃんは、あなたがた二人の独立した夫婦の協力の元に生み育てるのが理想なのです。
依頼心をおこすことなく、出産・育児という大事業を二人だけで乗り越えて、自立心のあるお母さんになってください。
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