お母さんの出産場所としては、
1.病院が55%で増加中
2.診療所、医院が40〜43%で減少中
3.助産所、自宅が3%で横ばい
というデータがありますが、最近、新聞やテレビなどで取り上げられることもあってか、助産所を分娩の場として積極的に選ぶ人がふえています。その理由としては、自分で自分の分娩を演出したい、助産婦の助けをかりて夫と共に演出したい、という願望を持つ人が増えているせいでしょう。
日本の場合、情報化社会で分娩についても自由に選択できる環境にありますが、注意したいのは、妊娠しているお母さんがどれだけ安全な状態で分娩できるかということです。これには、常に病院と診療所(医院)あるいは助産所との十分な連携が必要で、これがいき届いていれば、それぞれの環境が良くなっていますから、どの選択をしても出産にともなう母胎の安全性は高くなっていると思われます。
ここに、1970年と1990、1991年の周産期死亡率(*)と、新生児(一か月)死亡率のデータがあります。前者が1000人中、21・7人から5・7人への減少。後者が同じく1000人中、8・7人から2・4人への減少となっており、このレベルは世界でもトップです。
現在、日本では7〜8割が自然に分娩できるお母さんで、これがもちろん一番良いのですが、他の2〜3割が何らかの(分娩)リスクを持ったお母さんで、医療の手助けが必要です。このデータには、昔と比べ妊娠中からの正確な診察により、いち早く母胎にリスクがあるかどうかの診断がなされ、お母さん方が最善の安全確保ができる医療環境、医療スタッフのもとで分娩されていることがうかがえるのではないでしょうか。また、突発性の異常に関しても、ある程度のカバーがされていることがうかがえるでしょう。そのために安全(十分な設備、検査、スタッフ)確保ができるウィークデイに分娩(特に帝王切開)が集中し、土日の出産が減少する傾向にあります。
しかし、分娩に何らかの異常(リスク)をともなうお母さま方の、実は半数が予測できない突発性のものですから、分娩場所の選択に関しては、決して安易な気持ちだけの優先は危険でしょうし、私たち分娩に携わるスタッフ、医療スタッフにとっても、いかに隠れた異常・危険性を見つけ出し、それを適確に処置するために、なお一層の連携プレーが重要なのです。
そしてもうひとつの課題として、妊産婦の死亡率の改善があります。昭和25年(1950)に、出生10万に対して176人あったのが、平成3年(1991)には9人と、減少してはいるものの、この数値は世界の先進諸国と比べてもなお高く、改善の余地を残しているということをつけ加えます。
これには、生活環境が格段に良くなったとはいうものの、産む女性の意識の問題が含まれるのかも知れません。
*周産期死亡とは、妊娠満28週以後の死産と早期新生児(7日以内)の死亡を合わせた総数をいいます。
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