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選択の幅を広くもちましょう

富士見産婦人科

薄井 修

BeMam vol.12

 常套句になりますが、今妊娠・出産・育児に関する情報は、本、雑誌、TV,パンフレットなどマスコミを通じてあふれるように出ています。

 どの情報も、それぞれに大切なものであり、また正確なものですから、できるなら、全部とり入れてみたいという誘惑にかられることと思います。そうすることで、元気でいい子が生まれるとか、いい子に育つだろうと考えれば、どれもこれも理想通りにしてみようという気になっていくものです。お母さんであれば、なおさらそうしたいという気持ちにもなるでしょう。

 ですが、全部を取り入れる前に少し考えてください。

 情報を流す時には「こうあってほしい」という理想的な姿や標準的な形が出ていきます。

 というのは、妊娠にしても、分娩にしても、お母さんが100人いれば100通りの妊娠、分娩の状態があり、育児もまったく同じで、100人の赤ちゃんの発育は100人100様で、かといってそれを全部書くわけにはいきませんから、いきおい理想的、標準的なことを述べることになります。

 それほどに「個人差」の激しいのが妊娠であり、分娩であり、育児なのです。

 たとえば「母乳の育児」です。母乳で育てられれば理想です。ことに初乳には、お母さんが持っている病気に対する免疫が全部入っていますから、飲ませることができればこれに越したことはありません。

 しかし、分娩後すぐは、お母さんが疲れていたり、赤ちゃんのおっぱいの吸い方が未熟だったりで、なかなか思うようにはいかないのが普通です。

 それをおしてまで母乳だけで育児をしようと考えるよりは、それなりの量がでるようになったら母乳の足りない分をミルクで補ってと考える方が、お母さんにしても気が楽になるでしょうし、赤ちゃんの成長も順調にいくでしょう。ミルクが飛躍的に母乳に近づいている現在だからできる選択の広さがあるのです。

 妊娠中の過ごし方にしても同じことです。妊娠中はなるべく動いた方がいいということで、スイミングをしたり、ウォーキングをしたり、エアロビクスする妊婦さんもいます。また、働いているから必要ないという妊婦さんもいます。

 これは、それぞれの妊婦さんが、自分の現状を良く把握して、選択の幅を広く持って、自分のできる範囲の理想を実現しているとみることができます。

 この「現状を良く把握した自分のできる範囲の理想」の感覚を、分娩にも、育児にも応用していけば、情報に振り回されることなしに、楽しく、心豊かに妊娠、出産、育児を乗り越えていけるのではないでしょうか。

 そして、もし手にあまることがあれば、どんどん私たち医師に相談してください。

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