はんにゃはらみ…
すずかけ、ゆいげさ姿の修験者に
しっかり抱っこされて
ぼくたち走り抜けるよ、火の中を。
元気に育つからね、
お父さん、お母さん





『藤岡瓦』で有名な群馬県・藤岡市。鏑川、烏川、神流川、鮎川の4本の川が、ちょうど市を取り囲むように流れて日野蛇喰(ひのじゃばみ)渓谷などの見事な景観を生み、5〜6月には市名の由来にもなっている藤の花が淡紫色に咲き誇る藤岡市は、まさに山紫水明の地です。

そんな藤岡市の東部、烏川近くの観音寺では、毎年4月の第2日曜日に、観音寺火渡りが執り行われます。
庭に積み上げた護摩木(ごまぎ)に火をつけ、その残り火の中を裸足で渡るこの行事は、そもそもは修験者の修行のひとつとして行なわれるものですが、修験者に赤ちゃんを抱っこしてもらうことにより、『赤ちゃんが元気に育つ』との縁起が担がれ、寺の意向とは別に、口コミで広がってしまい、毎年、火渡りをお願いする両親は後を絶ちません。

当日、まずは管領太鼓という、家内安全のための太鼓の奉納から始まります。奉納された管領太鼓が一斉に打ち鳴らされ、30分の間、境内に響き渡ります。次に法螺がなり、火渡りの行を行なう修験者10数人が、鈴懸け・結袈裟姿で登場。境内の観音様のまえで般若教をあげ、火渡りを行なう会場に移動します。
あらかじめ切り落とされて組まれている檜の枝に点火。炎は一旦激しく燃え上がり、修験者たちのお経を唱える声が高まります。一通り燃え上がったら、塩をまいて鎮火させ、火渡りの行が始まります。

最初は修験者だけが渡り、大丈夫と判断されると、いよいよお母さんから代表の修験者に赤ちゃんが手渡されます。見知らぬ、見慣れぬ姿の人に抱っこされて、赤ちゃんもちょっと不安げですが、泣き出す子はいません。
赤ちゃんを抱っこした修験者は、塩の上で足を清め、腕の中の赤ちゃんの無病息災を祈ります。そしてお経を唱えながら、赤ちゃんをしっかりと抱いて、一気に火の上を走り抜けます。


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